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2004/06/17

砂の器

再読。
初めて読んだのが10年以上前であまり覚えていなかった。
映画の印象が強く、当然父子が放浪するシーンがあるものと思っていたら全然なし。「放浪した」という記録があるだけである。
松本清張作品だから、当然と言えば当然のことなのだが、これは感動巨編というよりは、正統派推理小説なのだった。

映画やドラマでは最初の殺人事件がほぼ原作に忠実に描かれているが、その後に続く3人の殺人は原作とは異なっている。なぜなら主人公和賀英良が「聴衆を感動させる音楽を作る作曲家」であっては、その後の殺人は成りたたないからである。彼が作っているのはドラマの主題曲のように「テレビでみてCDを買いに走る」種類の音楽ではない。理解できる人間は実はほとんどいないのである。しかし皆「わからないとは言えない」時代の雰囲気もまた面白いのである。

時代は昭和30年代。人々の日常生活の描写にもずいぶんと時の流れを感じる。
銀座の高級クラブのホステスでも共同トイレのアパートに住み、そこに愛人が訪ねて来る。警視庁の刑事の自宅には風呂がなく、風呂釜を買おうかどうか思案中である。アパートの住人は大家にお茶に呼ばれ、家族に紹介されたりする。今では絶対にありえないと言ってもいいだろう。

新幹線以前の時代であり、地方への出張は大変な長旅である。携帯電話どころか自宅に電話がある家すら稀な時代、問い合わせは全て手紙のやり取りで行われる。そして人々は皆、丁寧な日本語で会話する。
そんな具合に、すべてがゆっくりと進んでゆくのである。

今はライ病が不治の病でなくなり、戦災も遠いものになった。
設定を現代に置き換えようなどと考えながら読んでいくと、やっぱり仲居クンのドラマのようになってしまうのかもしれない。

<新潮文庫>

cover cover

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コメント

じょえるさん、はじめまして。先日グリーン・マイルのログにTBさせて頂きました岡枝と申します。私の方にもTBしてくださって、有難うございます。キングの映画ではショーシャンクが初めてのまともなものだったと観た時に実感し、やっと!遂に!キングの原作の良さを描いた映画が登場だ!と私も嬉しく思いました。なので、グリーン・マイルは同じ監督が撮られるとのことだったので、最初から最後まで安心して観れました。ネズミ君、名演技?でしたよね!或いはCGか?には見えませんでしたが。さて、今回は敢えて「砂の器」について書かれたログにコメントさせて頂きました。と申しますのは、私は映画『砂の器』は持っているビデオが擦り切れるほど繰り返し観ましたが、実は原作を読んでいなかったからです。学生の頃に親友が読んで、じょえるさんと同様に「映画とは全然違うの!」って聞かされて、彼女はそれが不満だったみたいな感想しか語られなかったので、何となく私も読まずにこれまで来てしまったのです。が、じょえるさんのログ読んで、目からウロコ状態です!ストーリーは違っていても、‘時代は昭和30年代。人々の日常生活の描写にもずいぶんと時の流れを感じる…’との御紹介から以降の文章を読ませて頂いてるうちに、何かモーレツに面白そうって感じてしまいました!私はそういう頃の日本の描写とかって弱いんですよ。嗚呼、お父様お母様はこの頃何歳で何してて、とにかくこういう時代を生きて来られたのですね…ってな感じで、ただそれだけでグッと来ちゃったりするのです。私の親友と違って、まともで読む意欲を沸き立たせてくださる御感想・御紹介文を有難うございます。今読んでる本(天使の代理人・山田宗樹)が終ったら次は「砂の器」読んで見ようと思います!今後も訪問させてじょえるさんの文章読ませて頂きます。では、また!

追伸:リンクもさせて頂きたいのですが、よろしいでしょうか?

投稿: 岡枝佳葉 | 2005/02/22 23:31

はじめまして。コメントありがとうございます。
この作品は映画と原作は全く別のものとして読んだ方が楽しめると思いますよ。
自分の好きな本について語りたいというところから、このブログをはじめましたので、私の文章で読みたい気持ちになっていただけるなんて、とても嬉しいです。また遊びにいらしてくださいね。
あ、当店はリンク、コメント、TBともフリーですのでお気遣いは無用です。
よろしくお願い致します。

投稿: じょえる | 2005/02/23 13:30

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