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2004/07/02

半身 : サラ ウォーターズ


「このミステリーがすごい2004」の1位に引かれて購入。舞台が19世紀のロンドンということも読んでみようと気を起こさせた。このあたりの時代の話が結構好きなので。

本筋とはあまり関係ないが、封建時代における「貴婦人」と貧しい庶民の女達の間の圧倒的な差別に驚かされる。当たり前のようだが、貴婦人とはまさにお姫さまであり、着替えからトイレまで自分で自分のことはいっさいやらない人間のことなのである。独身の貴婦人が結婚して主婦になるということは、我々のように家事育児一切を自分でやることではなく、屋敷の女主人となり、召使達に采配をふるう立場になるということなのだ。

こういうのを読むたびに、現代の日本でイギリス伝統のお茶だのケーキだの食器だの、なんだのかんだのは皆そういった身分の方々の文化であって、我々のように自分で料理やら掃除やらする者はそんなことに関わってはいけないんじゃないか、激しく身分違いなんじゃないかという気持ちになる。テーブルセッティングだって、召使を取りしきる家政婦の仕事であり、本物の貴婦人は決められた時間に、きちんとした服装でテーブルにつくことが仕事なのである。ただそれがすごく楽なことかといえばそうでもなく、仕事であるからには、食欲がないだの、今日のお客は嫌いだののわがままもまた通用しない。好きな時間に部屋にこもる自由すらないのである。

一方で貧しい者たちは、日々の食べ物を得ることで精一杯、下着も洋服もボロをまとい、ささいなことで犯罪に手を染めては刑務所に入れられている。刑務所の環境もまた劣悪なもので、さぞ多くの囚人が刑務所内で死んでいったのだろう。犯罪者にはならないまでも、身分の壁がある以上、まともに働いていても決して貴婦人のような生活ができるわけがなく、一生貧しいままで終わって行くのである。月並みな感想ではあるけれど、今の時代の庶民で良かったね、ということか。

さて、物語の方だが、嫁き遅れの「貴婦人」マーガレットと、ミルバンク刑務所に服役している若く美しい霊媒シライナの交流が2人の日記の形式で描かれていく。ちょっとホラーな少女小説風で、終わり近くまでこのままオカルトでいくのかと思わされる。誰も殺されないし、さほど大きな事件も起きない。結局騙されたのは誰か、騙したのは誰か、が核心部分なのだろうけど。ミステリーというにはちょっと単純すぎる気もする。
同性愛がテーマなので、素敵な男性キャラは全然出てこないし、もうひとつ感情移入がしづらい部分もある。
19世紀の女の生活や心情の記録と思って読んだ方が、興味深い作品かもしれない。

しかし何故、「このミステリーがすごい」の1位なのかは謎のままである。

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