闇の公子:タニス・リー
大人のためのファンタジーと言われて、真っ先に思い浮かぶのがこの作品である。その妖しさ、美しさ、もちろん面白さにおいても最高峰ではないかと思う。
地底に栄える妖魔の都の統治者であり、妖魔の中の妖魔である「闇の公子アズュラーン」が人間に仕掛ける残酷なはかりごとの数々が、オムニバス形式で語られてゆく。ほんの気まぐれに災いの種を播いては、人間達を苦悩させるアズュラーン。彼らの死のような苦しみもアズュラーンにとっては、ささいな戯れでしかない。千夜一夜物語を意識して書かれたということだが、悲恋あり、エロスあり、争いもあり、とまるで絢爛豪華な神話絵巻をひも解くような気持ちにさせられる。浅羽莢子氏の日本語訳がまた素晴らしく、美しく幻想的、そして格調高い小説となっている。
なによりも「まだこの世が平らかだった頃」という舞台設定が絶妙である。それによって、キリスト教的な神と悪魔のイメージを廃することが出来、「悪の象徴であり、同時に美の象徴である」ところのアズュラーンが造形されている。決して「完全な悪=勇者によって滅ぼされねばならない悪」ではない。だからこそ読者は、人間たちの苦しみに同情を覚えながらも、アズュラーンにある種の愛情を抱くことができるのである。
タニス・リーは、80年代に多くの作品がハヤカワ文庫から刊行されているが、現在入手できる本はこの作品を含めてほんのわずからしい。今では大御所といってもいいタニスなのにこの寂しい現状。日本ではファンタジー読みは稀少動物なのかと悲しくなってしまう。
※復刊ドットコムに特集が組まれているので、興味のある方は是非ご協力お願いします。

イラストは萩尾望都
Night's Master / Tanith Lee (訳:浅羽莢子)
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コメント
こんにちは、初めまして。
闇の公子にトラックバックしていただきまして、ありがとうございました。
Blogを開設して間もないところに、トラックバックしていただけるとは思わなくて少しびっくりしたのと同時に、とてもとても嬉しかったです。どうもありがとうございます。
こちらからもトラックバックさせていただきました。それと事後報告になって申し訳ないのですが、リンクもさせていただいております。それではこれからも記事をを楽しみに立ち寄らせていただきます。失礼します。
投稿 ハナ | 2005/02/12 01:00
こんにちは。
ブログをはじめて嬉しかったことの一つは
タニス・リーが好きな人がたくさんいるんだと
分かったことです。
周囲にはこういう本の話ができる人ってあまりいませんから。ファンの人を見つけるととても嬉しいです。今後とも宜しくお願いします。
投稿 じょえる | 2005/02/13 14:08