千尋の闇(ちいろのやみ):ロバート・ゴダード
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失業中の歴史教師マーチンは、遠く南アフリカに住む友人から誘いを受ける。そこで彼は裕福なホテル経営者から、20世紀始めのある政治家の過去についての調査を依頼される。イギリスに戻って、調査を進めるマーチン。やがて、彼の前に美貌の歴史学者イブが現れる...。
一応ミステリーなのだが、解かなければならない謎は過去の記録に埋もれている。つまり歴史調査が、謎の解明への道なのである。主人公はどことなく冴えない失業中の元教師。彼の性格もなんだか煮えきらず、優柔不断で時に打算的。「こっちにいっちゃ危ないよ~、あ~だめだめ、騙されてるよ~」という方向にずんずん行ってしまう。「ああ、もうダメなやつ」と思いながらも目が離せない。鍵となっている回顧録(メモワール)の部分も劇中劇のようで、2重構造の物語がいつか重なりあって、深みを増していく。人間は変われるのか、それとも変わらないのか、考え込んでしまうラスト。余韻のある小説である。
ゴダード作品、はまりそうな予感。
<創元推理文庫>
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