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2004/10/30

料理人誕生:マイケル ルールマン

料理人誕生
アメリカで最も有名で、最も影響力のある料理学校、カリナリー・インスティチュート・オブ・アメリカ(通称CIA)を取材するため、自ら入学してしまったジャーナリストの体験記。
ジャーナリストが体験取材したレポート、すなわちノンフィクションなのだが、まるで上質の青春小説のようでもある。

CIAは独特のカリキュラムで動いている。一つの課程を3週間で学び、次の3週間まったく違うことを学ぶ。これを10回繰り返すと、「イクスターンシップ」と称して最低16週間、外部のレストランやホテルで働く。帰ってからまた数課程。最後に学校が経営するレストラン4つをシェフやウエイターとしてこれまた3週間ごとにまわるというものだ。

授業内容も徹底して基礎からたたきこむというもの。例えば、調理技術のクラスでは彼らは6週間、くる日もくる日も野菜を刻み続ける。大きさを揃えて、時間内に、そして必要な量を。完璧なスープストックをつくるための毎日の課題だ。
この学校に入学してくるのは料理未経験者だけではない。かなりの経験を積んだ者も勉強しなおすためにたくさんやって来ている。だが経験のあるなしには関係なく、毎日大量の野菜を切るところから始まるのである。

教師は名だたる料理人たち。そして世界中から集まっている生徒たち。その中に身を投じたマイケルがいつしか料理に魅せられ、無我夢中で学び、訓練を重ねるうちに本物の料理人になってしまうところが面白い。ここでいう料理人とは、単に職業として料理をする人のことではなく、料理人としての心を持った人のことだ。マイケルは文筆家であって、どこかのシェフになることはないかもしれないが、それでも本物の技を身につけた根っからの料理人となるのだ。
試験の日、猛吹雪の中を命の危険があるにも関わらず、学校に向かうマイケル。そんな彼に教師は言う。

料理人は何があってもキッチンに辿りつくんだ。料理人とはそういうものなんだ。」

この発言の意味を彼は後日のインタビューで質問している。答えはこうだ。

危険を冒すとしても、それは自分の決めたこと。自分で責任をとらねばならない。君が学校を休んでも、学校は休まず続いてく。外の世界と同じだ。レストランは営業を続け、ホテルも営業を続ける。職場に来なかった人間に給料は支払えない。それがわれわれの考え方なんだ。厳しいと思われるかもしれないが、生活というのはそういうものだ。プロ意識とはそういうものなんだ。(抜粋)
選択肢があると多くの人間は楽な道に逃げたがる。けれどその選択肢が与えられないとき自分にどれだけのことができるか。自分でも驚くほどだよ。

職人魂はどこの国にもきちんと存在するのだ。


※今、再読してみると授業風景がなんとなくハリポタに出てくるホグワーツを連想させる。とくに鍋で魔法薬をつくるところ。材料が黒板に書いてあるところや、生徒の鍋の間を先生が見て廻るところなど。

※ 翻訳の渡辺 葉さんは椎名誠の娘さんだそうだ。

【11/2 追記】  The Culinary Institute of Americaのサイト
この本の中に出てくる副校長が校長になっているようだ。(上記インタビューに答えている人)
こんな建物。
Roth-Hall-Aerial.jpg
         

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