« 資源ゴミ当番 | トップページ | 猫の寝床さがし »

2004/10/22

幻魔の虜囚 : タニス・リー

genma.jpg現在絶版。復刊投票しているが(復刊ドットコム)、待ちきれずに古本で購入してしまった。
「平らな地球シリーズ」より「おとぎばなし」色の強いファンタジーである。

幼い頃から奴隷として働く少女シャイナは、ある日、村を訪れた旅芸人の若者に恋をしてしまう。
若者にもう一度会うため、シャイナは山に住む魔女バルバヤートと、ある取引をすることになる。習い覚えた魔法によって、若者を追いかけるシャイナだったが、その彼もまた別の意味での奴隷だった。一座を率いるカーニックは実は邪神をあがめる神官で、かつ凶悪な魔法使いだった。一座の者たちはカーニックに魂を抜かれ操られていたのだった。恋する男を救うため、シャイナは一人カーニックに戦いを挑む決心をするのだが…。

少女は恋ゆえに魔女と取引をするのだが、それには魔女の言う条件を飲まなければならない。また求める相手に合ったところで口を利くことすらできない。それでも恋に賭ける少女、というプロットは有名な「人魚姫」の物語そのままである。
しかしその人魚姫の甘ったるい物語も、タニス・リーの手にかかると全く違う色合いを帯びる。主人公シャイナは、かなり残酷な目に合うし、それでも恋が成就してハッピーエンドという訳でもない。それどころか、戦いの後には恋すらも乗り越えて次なるステージに向かうのである。
敵役となるカーニックの人生も、生い立ちから細かく描かれており、単純な悪役として登場するわけでもない。その悲惨な人生には、敵役でありながらも読者の共感を呼ぶものがあり、憎むだけではいられなくなる。

また、特筆すべきなのは魔法の描写だろう。「呪文とは言葉であり、その言葉を信じた時、それは真実になる」という考え方に基づいている。ハリポタの呪文や、RPG等で使われている呪文(××と唱えると○○が起きる)とは、だいぶ様子が異なっている。その分、魔法の効果が文章上でもわかりやすく、また美しく表現されているのである。

美しい少女の恋と冒険、そして成長の物語である。とても良くできた、新しいおとぎ話だと思う。

<ハヤカワ文庫> ※表紙は岡野玲子


※平らな地球シリーズについてはこちらに感想を書いています。
 闇の公子 死の王 惑乱の公子

|

« 資源ゴミ当番 | トップページ | 猫の寝床さがし »

好きな本」カテゴリの記事

」カテゴリの記事

コメント

こんにちは!
「幻魔の虜囚」にTBありがとうございました。
確か以前に「シューレスジョー」にTBを頂いたことがありますよね? ごあいさつが遅くなってすみませんー。はじめまして。

タニス・リー、お好きなんですね!
私も大好きなんですー。手に入らない作品が多いので、地道に古本屋巡りをしています。全部入手できるのはいつの日か…
他にも私のブログに感想を書いてる作品があったので、TBさせていただきました。他にも探せばいろいろと共通項がありそうです。どうぞよろしくお願いいたしますね(^^)。

投稿: 四季 | 2005/05/27 07:35

こんにちは。
たくさんのTBありがとうございます。
そちらのブログには結構お邪魔しているのですが、ご挨拶もせずに失礼いたしました。
好きな本が似ているな、と思っていました。
こちらこそよろしくお願いしますね。

投稿: じょえる | 2005/05/28 00:38

コメントを書く



(ウェブ上には掲載しません)




トラックバック

この記事のトラックバックURL:
http://app.cocolog-nifty.com/t/trackback/32969/1746005

この記事へのトラックバック一覧です: 幻魔の虜囚 : タニス・リー:

» 「幻魔の虜囚」タニス・リー [Ciel Bleu]
[bk1] 奴隷ではあっても強く誇り高く生きていたシャイナが、恋した若者のために、邪神の使徒・ヴォルクハヴァールに挑む物語。 amazonにはこの本は登録されて... [続きを読む]

受信: 2005/05/27 07:11

« 資源ゴミ当番 | トップページ | 猫の寝床さがし »