バールのようなもの:清水 義範
バールのようなもの
温厚な紳士のイメージがある清水義範さんだが、作品の切れ味は温厚どころではなく、凄みさえ感じられる。そのギャップが結構好きなのである。
以前、この記事を書いているときに見つけたこの本、読んでみたら期待に違わず面白かった。短編集だが、あとがきによるとほとんどの作品が文芸誌の新年号に掲載されたものだとか。これほど毛色の変わった作品をよくも次々と書けるものだと感心する。
謎の窃盗道具「バールのようなもの」を探し続ける男を描いた表題作はもちろん、どの作品も紳士のナイフの切れ味が味わえる。
暇な老人たちが、極秘で味わう贅沢を描いた「秘密倶楽部」には苦笑してしまう。
また、最後の「新聞小説」ではいろいろな作家の文体のパロディをしてみせてくれる。(全部モデルがあるのかどうかは勉強不足でわからなかったけど。)筒井康隆風などは素晴らしい出来映え。新聞小説を書く作家のむなしさ(=清水氏の実体験か)も伝わる快作。
目次
バールのようなもの
秘密倶楽部
○○についてどう思いますか
みどりの窓口
特別審査員
旅は道づれ
役者語り
善男善女の夜
豪奥新報元旦号第二部
山から都へ来た将軍
愛知妖怪事典
新聞小説
<文春文庫>
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