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2004/11/30

魔女は夜ささやく:ロバート・R・マキャモン

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魔女は夜ささやく(上)
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魔女は夜ささやく(下)
17世紀、開拓時代のアメリカ。 イギリスの植民地にある小さな町ファウント・ロイヤルは数々の災厄に見舞われていた。天候不順による作物の不作、疫病、火災、遂には2件の殺人事件までが起こる。町の有力者は、殺された男の妻を魔女として逮捕した。魔女を処刑すれば全ての災いは終わり、町は以前のような賑わいを取り戻すと信じて。
その魔女裁判を行うため、老判事と若い書記がはるばるとやってくる。道中の宿屋で殺されかかり、命からがら2人はファウント・ロイヤルにたどりつくのだった。
裁判で魔女の恐ろしい行いを証言するどの証人も嘘を言っているようには見えず、証拠も動かせない。だが、判事の書記のマシューだけは、彼女が犯人であるとも、また魔女であるとも思えないのだった。火あぶりになる日が刻々と近づくなか、彼は「魔女」レイチェルを救うためたったひとりの闘いを始めるのだった。

マキャモンが10年ぶりに出した作品だとのこと。ホラー小説かと思っていたらまるで違っていた。アメリカが舞台の時代小説、それもミステリー仕立てというところだろう。「奴らは渇いている」等のホラー小説にくらべれば、格段に優れた出来映えだと思う。
イギリス人とスペイン人が新大陸に領土を奪い合っている頃の話だ。どちらも相手側を野蛮人のように思い、敵視しているのが面白い。スペイン人を指して「あのイカ喰い野郎ども」などと言っている。イギリス人以外の人間への差別がこの新天地にも蔓延しているのが、フロンティアスピリッツだけではない開拓時代のアメリカのダークな面が描かれていて興味深い。
魔女裁判という迷信的なことを行うのに、私刑は町の将来のためにならないとして、あくまでも正式な判事の到着と判決を待つというアンバランスな感じに、この時代の雰囲気がよく表れているようだ。
主人公マシューは孤児院育ちのまだ20歳の青年だ。世間知らずで誠実な青年が、魔女に恋したことによって海千山千の山師たちを相手に闘うことになる。その一途な情熱と、彼の冷静な頭脳の冴えが心地良い。青年の精神的成長が、爽やかな読後感を与えてくれる。

<文藝春秋>


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