聖なる島々へ <デイルマーク王国史2>
聖なる島々へ <デイルマーク王国史2>
ダイアナ・ウィン・ジョーンズ (著), 田村 美佐子 (翻訳)
豊かな小作農の息子として、裕福で幸福な生活を送る少年ミット。だが、非情な領主ハッド伯爵の過酷な小作料の値上げにより、一家は生活に窮するようになり、ついには家から追い出されてしまう。
港町の共同住宅で貧しい生活をはじめるが、父親はレジスタンス活動に入れこみ、ある日倉庫の放火をもくろむが仲間の裏切りに合い、行方不明になってしまう。
復讐心を持って育ったミットはやがて自らテロ行為を行うことを目標として生きていくのだが…。
『詩人たちの旅』に続く第2作だが、登場人物も舞台も重なるところはなく全く別の物語が展開する。
母に「復讐を果たすこと」を吹きこまれて育ったミットと、領主の孫である姉弟が、同じヨットに乗り合わせて、自由の地である北部を目指す航海をすることになる。小さな船で嵐を乗り越えた彼らがたどりついたのは北部ではなく、「聖なる島々」と呼ばれる場所だった。そこでミットは自分の運命を知ることになる。
登場人物が誰も彼も欠点だらけ。主人公ミットも女主人公(?)ヒルディも、物事を深く考えられる頭脳はなく、流されるまま、感情の赴くまま行動し、自ら困難にはまり込んでいく。大人たちも、彼らに深く愛情をそそぐような人物はおらず、父も母も自分勝手なことばかりしている。要するに、読者が主人公とともに一喜一憂し、ともに冒険するような思い入れが生まれにくい設定なのだが、それでも読ませるリアリティががすごい。ファンタジーであることを忘れそうになるくらい、デイルマークという世界が緻密に作りこまれている。
4作で完結ということらしいが、どこかで物語が繋がっていくのだろうか。そうだとしたら、すごく面白くなりそうな予感がする。(ドラクエ4みたいな感じですかね。)楽しみになってきた。
<創元推理文庫>
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