猫のゆりかご:カート・ヴォネガット・ジュニア
猫のゆりかご
原爆を発明した科学者は、人類滅亡の種子を残して死んだ。一滴で世界中の水が凍ってしまうという「アイス・ナイン」である。彼の3人の遺児たちは、密かにアイスナインのかけらを分けあって保管していた。
世界の終末に関する本を書こうとする作家ジョーナは、科学者の取材をするうち、3人の子供達に出会う。運命の糸に引かれるように南の島サン・ロレンゾに向かったジョーナ。彼の意図した本は完成しなかったけれど、ジョーナはその島で世界の終末に立ち会うことになったのだった。
冷静に考えれば、なんとも救いようのない物語だ。主人公はもちろん登場人物の誰ひとりとして、生きる意欲や未来への希望を持ってはいない。すべての人物が絶望に取りつかれているような感じすら受ける。
それなのに、この作品には暗さが微塵もない。ジョーナの手記の形を取っているが、彼は目の前で起きている出来事に反応らしい反応を示すことなく、ただただ状況に流されていくだけだ。ユーモアを交えた会話、引用されるボコノン教の教義の洒落たアイロニー。127もの章に分けられた物語は、まるで軽いユーモア小説のように展開していく。
この作られた宗教「ボコノン教」の造形がまた素晴らしい。全てを祝福し、全てを許してくれるような幸福感すら感じられる教義の数々が引用されている。
たとえば『カリプソ53番』という歌はこんな歌詞だ。
おお、セントラル・パークで
居眠りしている酔いどれも
昼なお暗いジャングルで
ライオン狩りするハンターも
それから、中国人の歯医者さん
イギリスの女王様
みんなそろって
おんなじ機械のなか
ナイス、ナイス、ベリー・ナイス
ナイス、ナイス、ベリー・ナイス
ナイス、ナイス、ベリー・ナイス
こんなに違う人たちが
みんなおんなじ仕掛けのなか
(原文)
Oh, a sleeping drunkard
Up in Central Park,
And a lion-hunter
In the jungle dark,
And a Chinese dentist,
And a British queen ―
All fit together
In the same machine.
Nice, nice, very nice;
Nice, nice, very nice;
Nice, nice, very nice;
So many different people
In the same device.
Nice, nice, very nice; と来た。この底抜けの明るい歌詞はどうだろう。
小さいことなんか悩んでいるのは馬鹿らしくなるような突き抜けた楽天主義が感じられる。
それでも、それが示しているのは、たぶん絶望なのだろう。
教祖ボコノンのたくさんの言葉の中で、私がもっとも気に入ったのはこの一言だ。
「さよならを言っておけば、まず間違いはない。」
「まったくもってその通り」としか言えないではないですか。
<ハヤカワ文庫>
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コメント
なつかしー です
ぼこのん ぼこまる
ほおおおおおくうう
でしたっけね
投稿 kk | 2005/11/16 20:32