多元宇宙の帝国 :キース・ローマー
多元宇宙の帝国
この宇宙は1つだけではなく、膨大な数の平行世界にそれぞれの宇宙が存在し、お互いがほんの少しづつ異なっている、というのがSFではおなじみの多元宇宙である。これは、その多元宇宙を舞台にした冒険小説。やっぱりスペースオペラと言うのだろうか。宇宙船には乗らないのだけど。
代わりに乗るのが次元転移機。これを使うことによって、ひとつの宇宙から別の宇宙(ラインと称されている)へ移動が可能なのだ。数あるラインの中でこの移動技術を開発した「ゼロゼロ」ラインの世界が事実上この多くの平行世界を統治しているというのがこの物語の基本設定である。
アメリカの外交官、ブライオン・ベイヤードは、ある夜ストックホルムの路上で拉致されてしまう。奇妙な乗り物で連れてこられたのは、ゼロ・ゼロ次元にある「帝国」の首都ストックホルムだった。この中心世界は、「暗い島国2」という別のラインからの侵略攻撃を受けていたのである。その国の独裁者とうりふたつであることから、ブライオンは戦争を回避するための作戦に参加させられることになる...。
別次元の世界が、すごく未来的なものというよりは、ちょっと昔のヨーロッパ風なのが、独特の雰囲気を出している。主人公もどちらかというとジェームス・ボンド風のイメージで、まるで正統派スパイ小説のようなストーリー展開である。2転3転する主人公の運命にハラハラ、ドキドキしちゃうのである。歴史上の有名人が別のラインではどんな風になっているか、などの小技も利かせてあって、そんなところも楽しめる。
ローマー得意の娯楽SF大活劇。(得意といっても実はこれがデビュー長編らしいのだが。)
やっぱり、こういうの大好きなのである。
<ハヤカワ文庫> 矢野 徹 訳
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