闇の城 :タニス・リー
タニス・リーのジュブナイル向けの作品。
音楽の才能に恵まれ、吟遊詩人の修行をする青年リア。そのままでいれば安定した未来があるはずだったリアだが、ある晩、不思議な人物と出会ったことによって運命が変わってしまう。彼は魔法の竪琴を手に入れ、放浪の旅に出ることになったのだ。
一方、生まれた時からずっと老婆2人の世話を受けながらも暗い城に幽閉されている娘リルーン。
なんとか脱出しようと試みるが、失敗し、鎖に繋がれてしまうのだった。彼女はたったひとつしか知らない魔法を用いて「誰か」を呼び寄せることにする。
呼び寄せる娘と、声に引き寄せられる青年。2人の主人公の物語が交互に語られてゆく。
この2つの物語が徐々に徐々に絡んでいくあたりのなんという巧さだろう。予想外の運命に翻弄される青年の行く末が気になるのはもちろんなのだが、それと同時になにか「妙な不安感」のようなものが、ストーリーを引っ張っていく物語でもある。
リルーンは一方の主人公であるはずなのに、悪の化身かのように語られていて、彼女の正体の結末近くまで謎のままだ。だから読者は彼女に振りまわされるリアの姿になんとも言えず不安な気持ちを覚えるのだろう。
ジュブナイルということで、善と悪との闘いがあって最後は善が勝って終わるのかな、と勝手に想像していたが、そんなありがちな結末ではなかったんだった。(と、過去形なのは、昔読んだことがあるのだが内容を忘れていたため。)
さすがタニス・リー。
<ハヤカワ文庫> こだま ともこ 訳
※ということで、昔は持っていたのに今は手元にないタニス・リー作品を収集中です。
やっぱり面白いです。面白すぎて感想書くのも忘れて、次の1冊を読んでしまってます。(笑)
ぼちぼち書いて、ぼちぼちとアップする予定です。
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