樽:F.W.クロフツ
樽
1920年に書かれた作品ということだ。題名だけは知っていたが、手に取るたびになんだか読みづらそうで、止めてしまっていた。今回ハヤカワから、新訳版が出ていたので、即購入。活字もちょっと大きくなっているようだ。
一言で言えば「古き良きミステリ」ということだろう。
ドーバー海峡を船で運ばれた来た奇妙な樽の中には、女の死体が詰まっていた。樽の受取人がもっとも怪しいが、では一体どうやって殺したのか。なんのために死体を樽で運搬したのか。いや、本当に彼は犯人なのか...。
イギリスとフランスの刑事たちが、地道に地道に足と頭脳で知的パズルを解いてゆく。その地道さ加減こそが、この小説の面白さと言えるだろう。100年近く前のイギリスやフランスの生活も興味深い。殺人の捜査なのだが、なんだか優雅な感じがするのである。もちろん緊迫感もあるのだが。彼らがゆっくり汽車で旅をしたり、手紙を書いたりしてるからかも知れない。
この時代、電話は交換手が繋ぐもので、また、女性は必ず帽子をかぶり、その帽子を「帽子ピン」で留めるものなのである。そんな細部が面白いし、しかも謎解きにも重要なポイントなのである。
しかしまあ、85年も前の小説がいまだに面白いというのは、凄いことだと思います。
<ハヤカワ・ミステリ文庫> 加賀山 卓朗 (訳)
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