初秋 : ロバート・B・パーカー
初秋
誰かが自分のことを気にかけてくれる。
誰かが自分のそばにいてくれる。
誰かが自分のためにきちんと世話をしてくれる。
誰かが自分のために何をどうすべきか教えてくれる。
働いて何かを創り出す。
ひたすら体を鍛える。
そして「自分の人生を得る」ことができた少年は大人になっていく。
この作品でもっとも感動的なのは、傷ついた少年に主人公スペンサーが「自分の教えられること」(体を鍛えること、家を建てること)を教えることによって、彼に自分の人生を切り開くための力を与える、という部分だろう。
この寓話のような探偵小説から、若い人は、「自分の人生」を得るためにはシンプルな努力こそ必要なのだ、と学ぶだろうし、そしてもう若くない人は、子供に教えなくてはいけない一番大切なこととは何か、を学ぶのである。
そう、それは「人生とは自分自身のものなのだ」ということなのだ。
これは簡単そうで気づくのが難しい真実だ。
親になった人たちが子育てでやってしまいがちな失敗のほとんどは「子供の人生は親の物ではない」という当たり前の事実に気づかないところからはじまるのだと思う。
「こどものため」と思えば思うほど、自分の夢を果てしなく投影してしまい、親も子もなんだかきゅうくつになってしまうのだ。(もちろん自分の子育てへの強い反省を持ってそう思うのである。)
しかしまあ、「『これが自分の人生だ』と自信を持って生きてゆくのは、ずいぶんと難しいことだよなあ」と、この年になって感じている。ハードボイルドな生き方への道はすごく遠いのである。
※スペンサーシリーズの中でというよりも、自分の読書歴の中でもベスト10には入れたいと思っているほど大好きなこの作品、読書好きな皆さんの間で傑作の誉れ高いのは、大変嬉しいことである。
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