航路:コニー・ウィリス
航路
デンバーにある大病院、マーシー・ジェネラル。認知心理学者のジョアンナは臨死体験者の聞き取り調査のフィールドワークを行っている。認知心理学の立場から、蘇生した患者から一刻も早く正確な情報を得たいと病院中を駆け回っているが、この病院には全く別の立場から臨死体験者の経験談を集めて回るモーリス・マンドレイクがいて、彼女の仕事はなかなかうまく行かない。マンドレイクに先回りされると、臨死体験が荘厳な宗教的体験に刷りかえられてしまうのだ。
行き詰ったジョアンナは、擬似的な臨死体験を作り出せる物質を発見した内科医リチャードとともに、被験者を集め、NDE(臨死体験)研究プロジェクトを立ち上げる。
順調に進むかに思えたプロジェクトだが、被験者に問題が相次いだだめ、遂にジョアンナは自らが実験台となりNDEに望むことになる。
何度も聞き取り調査で聞いた「大きな音、トンネル、まぶしく白い光」を体験するジョアンナだが、「この場所を知っている」という感覚からどうしても逃れることが出来ない。「死後に行くはずの場所」についての記憶の謎を解くため、ジョアンナは自らの過去の記憶を探り始めるのだった。
「犬は勘定に入れません」でファンになってしまったコニー・ウィリスの作品である。
迷路のような病院内を駆けずり回るジョアンナと、彼女を呼び止めては話したがる人々との追いかけっこや、病院内の人間模様が細かい場面転換で描かれているのを読むと、ドラマ「ER」を見ているような気持ちになる。小説として考えれば、かなり冗長な感もあるが、病院コメディもののアメリカのドラマをまとめて見ているような気分で読めば、楽しいことこの上ない。
そして「臨死体験とは何か」をさぐる主人公が自らを実験台として「死後の世界」を垣間見るあたりから物語はミステリーの様相を帯びてくる。まさかの衝撃で終わる前半、その余韻がさめやらない後半に入るともうページから離れることができなくなる。静かな静かなラストが相当に良い出来だと思う。
認知心理学については良く知らないのだが、要するに「自分の体の外や中の状況を脳はいったいどう受け止めるのかを探る」ということらしい。この作品に出てくるいろいろな「メタファー」を読んで、果たして自分が臨死体験するとしたらどんな場所に出るのだろうかと、いろいろ考えてみたりもしたのだが。(東京タワーに登って「333からトビオリロ」という命令を聞く、雪の中をひたすら歩く、無人島にいて瓶に入れた手紙を流すとか。)
でも、そんなこと想像するだけ無駄なのかも知れないと思ってやめてしまった。
なぜなら、今考えたことが当たったとしても、全然違っていたとしても、私には証明する術がないだろうからである。
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