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2005/10/11

蝉しぐれ

416719225X蝉しぐれ
原作があまりにも素晴らしいと、忠実に映像化しようと努力しても決してその原作にはかなわない、のかもしれない。

今月封切られた映画を観てきた。波乱万丈のストーリーも、感動の大団円があるわけでもないので、映画としてまとめるのは難しい作品だとは思う。
それでも、父子の愛情や少年たちの友情、お家騒動にかなわぬ恋。どれも美しく情感豊かに描かれている。また、季節の移ろいの美しさに見とれてしまう。満開の桜、一面の雪景色、黄金色の稲穂、そして蝉しぐれ。丁寧に丁寧に時間と愛情を込めて作られた映画だということがよくわかる。

それでもこの映画は小説の感動を超えられなかったと思う。原作への愛情が伝わって来るだけに惜しい気がして仕方がない。

もちろん前のNHKドラマよりはだいぶましだったとは思うが。(内野聖陽はともかく、おふくの女優は完全にミスキャストだった。芝居できないんだもの。)
ストーリー上、細部が省かれるのは仕方がないのかもしれないが、文四郎が「養子」だということが説明されないのは何故なのか。血の繋がらぬ厳しい父を、心から尊敬するに至る過程がかなり重要なのだと思うのだが。

また「矢田さんの妻女」はもっと危険なほど美しくなくてはいけないし、夫が腹を切らされて後の転落ぶりも描いてもいいんじゃないかと思うのだが、それもなんだか適当に流されてしまった感じがする。

圧巻はおふくと赤ん坊を逃がすための、殺陣の場面。屋敷中の刀を集め、抜き身を畳に刺して待ち構える主人公達。1人切っては次の刀、1人切っては次の刀、と変えて行く。「人を切ったら、刀は切れなくなる」というこのリアリティが怖い。このシーンの緊迫感が凄まじい。侍ふかわりょうもなかなかの演技だったと思う。(今田耕治は違うでしょ。頭が切れる感じが皆無。)

静かなラストシーンも結構好き。

でも終わってからの余韻も小説にかなわないんだなあ。本当に惜しいなあ。


ところで、藤沢作品で一番好きなのは実はこれ。(短編の連作。お勧めです。是非最後まで読んで下さい。)
4101247013
用心棒日月抄


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