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2005/11/27

ALWAYS-三丁目の夕日

映画ALWAYS-三丁目の夕日

ひと言でいうなら「ノスタルジーという名のファンタジー」。

yuuyake-4091800637独特の絵(人も犬も猫も同じ顔)で描かれた膨大な短編の連作をよくも映画にまとめたものだと思うし、見事なCG世界も、ベタに徹した泣かせ技も見事としかいいようがない。

鈴木オートの家族も、夢破れた小説家も、親に捨てられた子も、皆うまいものだ。
失われてしまった昭和30年代への憧れを描くファンタジーとしては非常によくできた映画だと思う。

でもなあ。

ひとつだけ、どうしても納得できないことがある。

それは「六さん」は女の子ではありえない、ということだ。

原作の男の子を映像化の時に女の子にしちゃうというのは、わりとよくあるパターンかもしれない。その方が親しみやすいとか、単にその役をやる女優の人気にあやかれるとか、いろいろ理由はあるのだろうが。
(そういえば、掘北真希は今ドラマでも同じパターンの役をやっている。)

それでもこの映画の「六さん」は女の子ではいけないのだ。

六さん(映画では六ちゃん)は、青森から集団就職でやってくる。(そして「鈴木オート」に来るまで、自分が何をするか知らないのも変だが。)

考えてもみてください。
昭和30年代に自動車整備工として女の子を雇おうとするだろうか。
就職させる側も女の子を斡旋したりするだろうか。時代はまさにこれから高度成長期に入ろうというときで、整備工といえども自動車にかかわるのはある意味花形の職業だっただろう。実際多くの集団就職者が自動車工場に入っただろうが、たぶんそれは全員男子だったはずだ。
当時は、そういう機械を扱う技術的な仕事は、女性の職場ではなかったのだ。男性の上司や先輩から体で仕事を教わるというある意味職人の世界だったはずなのだ。
もちろん集団就職に女子がいなかったといっているのではない。でも、当時の女性の仕事はなんだったのだろう。
工場だったら、繊維関係などの製造ライン。お針子やバスガイドや理・美容師など。「手に職を」と言ってもあきらかに男の職場と女の職場は違っていたはずなのだ。
もし映画のように「鈴木オート」に中卒の女の子が来るとしたら、その子の仕事は「賄い」だったのではないか。そんな「女性にとっての閉塞感」も昭和という時代の空気を作るには重要なファクターのはずなのだ。その空気感がないから、そこだけ妙に現代的なのだ。
飲み屋のヒロミに感じられる「この時代に女に生まれたこと」のあきらめのようなものが、「六ちゃん」にはまったく感じられない。あるのは家族関係の屈折だけだ。そのことに非常な違和感を感じて、なんだかのめりこめなかったのである。

つい最近見た本物の昭和30年代映画「番頭はんと丁稚どん」には、意図していないはずなのに、歴然とした貧富の差、身分の差、そして男女の差が描き出されていた。貧乏の側から金持ちを見る気持ち、女の側から男を見る気持ち、そんなほろ苦さもまた、「昭和」を作っていた大事な要素なのだと思うのだ。

昭和への憧れが強すぎて「あの時代」を美しく作りすぎてしまった気がして仕方がないのだが。

ていうか、そんなに昔は良かったですかね? 
なんか最近の昭和ブームって「おふくろの味がいちばん」ていうマザコンおやじを連想して、あまり好きじゃないんですけど。いや、個人的にですけどね。私は今の方がいいけど。

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コメント

> ていうか、そんなに昔は良かったですかね? 

いまの生活に余裕があるからこそ、過去を美化することもできると。そんなところじゃないですか。あのVFX見ているとそう思う。

投稿: さいもん | 2005/12/04 03:40

はじめまして、キング堂さんのブログから来ました。

まだこの映画は観ていないのですが、自分は再放送の「三丁目の夕日」(アニメ)をついこの間まで見ていたので、こっちに思い入れがあります。

映画では六さんが女の子になっちゃってるんですか。 小学生の女の子(みち子ちゃんだったかな?)に惚れられちゃうエピソードとか、それ以前に整備工という意味でもやぱり女の子っていうのはムリがありそうですね。

思い出っていうのは純化されやすいので、つい”昔は良かった”になっちゃうのかな?とも思ったりします。

投稿: itchys | 2005/12/05 00:05

さいもんさま。
つーことは、今の私の生活には余裕が足らん、ということですかね(笑)。

itchys さん、はじめまして。
漫画に思い入れがあればあるほど、きっとこの映画は「あれ?」って感じなのかもしれません。

でも映画としてはとてもよく出来ていると思いますよ。お暇があれば出かけて行って損はないと思います。

投稿: じょえる | 2005/12/05 19:15

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