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2006/01/31

オリバー・ツイスト:チャールズ・ディケンズ

oliverオリバー・ツイスト
映画の予告を見て、面白そうだなあと思うとつい原作本を買ってしまう。
先にストーリーがわかっているなんてつまらないと思われる方も多いと思うが、私の場合「どんな風に映画化されているか」への興味があって、先に原作を読んだ方が映画も楽しめるような気がするのだ。

で、オリバーツイストなのである。

内容を簡単に説明すると、施設で生まれ育った孤児オリバーの悲惨な少年時代と、彼を救い幸せにしようとする人々の努力の物語である。
凄まじい貧富の差がある時代の、金持ち達の自己満足的な貧民救済と、それでも食べるものすらない貧民の生活をディケンズは克明に描いている。時々作者が前に出て来ては講釈を垂れるのが鬱陶しくもあるが、そういうものと思ってしまえばあまり気にはならない。

寧ろ気になるのは物語の底流に流れている「物の考え方」の方なのだ。
オリバーはなんだってこんなに酷い目にばかり合うのかとか、この環境で悪に染まらないのはなぜなのかとか、思わせぶりな謎が呈示されているのだが、結局は「彼は実は生まれが良かったから」というのが理由なのである。これは現代の目から見るとあまり納得の行く答えにはならない。

どちらかと言えば、救貧院は貧しい人を救うための場所ではなく、まるで罰を与える場所のように描かれている。例えば、離婚した女性は「離婚した」という罪でそこに行くしかないのである。離婚すると即、貧民なのである。そんな社会状況を風刺しながら、それでもオリバーの救済される理由が「実は生まれが良かった」というところに落ち着いてしまうのだ。

「貧しい人々はもともとが罪びとなのであり、上流階級の人々は心が気高いのだ」ということを信じていないとこの物語は成り立たない。
ここに100年の時の隔たりと、そしておそらくは国民性の違いが見えてしまう気がする。

もし日本だったら、100年前ですら「貧しいから根性まで腐っている」とか「生まれがいいから精神が高潔だ」などという物の見方は通用しなかっただろうと思うのだが、どうだろう。(単に私の都合にいい想像なのかもしれないが。)

そんな風に考えると主人公オリバーの可哀想さ加減も、なんだか甘い気がしてくる。「生まれが良いのにこんな境遇は可哀想」という理由で金持ちの味方が現れて助け出されるオリバーよりも、一生貧乏で悲惨な状態のままの他の孤児たちの方がずっと可哀想に思えてくるのである。

マロの「家なき娘」(感想はこちら)では主人公は同じような境遇にあるが、最後に労働者の環境を改善し、小さな子供の居場所をつくるという社会的活動に目覚める。願わくは、オリバーのその後の人生は貧しい人々のため尽くしてほしいものである。

さて原作を読み終わっての映画のみどころは…
19世紀のイギリスの風俗や風景がどんな映像になっているか。子役の演技力。
オリバーの可哀想ポイント、そして感動のポイントをどのシーンに置いているか、かな。

<新潮文庫>

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コメント

こんにちはー。

流石、ばりばりのヴィクトリア朝小説!
この時代の階級意識と差別と狭量な道徳観がぎっしり詰まっていそう。
心して読まねばなりませんね。
映画は…どうしようかな、悩み中です。

投稿: multivac | 2006/02/01 10:05

>気になるのは物語の底流に流れている「物の考え方」
「物の考え方」が理解できない/受け入れられないのはつらいですね。私は古典的な名作というのをあまり読まないので、基礎的な教養が無く、困ったものだと思っているんですが、このあたりが古典嫌いの原因でもあります。「この時代はこうだった」と割り切るのがどうも苦手で。感情移入できない作品はどうも楽しめません。解説がないと理解できない作品も。

投稿: kingdow | 2006/02/01 12:45

multivacさん
>階級意識と差別と狭量な道徳観がぎっしり

そうそう、詰まってました(笑)
そうなんですよ。言葉が見つからなかったけど狭量っていうのがぴったりです。
もっとおおらかに行こうよ、と言いたくなりました。

kingdowさん
理解はできるんだけど、今の価値観から判断してしまうんですよね。この時代はこうだったんだよという解説は必要だと思います。
時代の雰囲気を知ってた方が、面白く読める本が増えるような気がするのでつい手を出したのですが、私もあまり感情移入はできませんでした。。

投稿: じょえる | 2006/02/01 14:23

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