ハナシがちがう!―笑酔亭梅寿謎解噺:田中啓文
単行本では「笑酔亭梅寿謎解噺」というタイトルだったのが、文庫版になって「ハナシがちがう!」と改題されたようです。文庫版では解説を桂文珍師匠が書いています。
無理やり落語家に弟子入りさせられたチンピラ兄ちゃん、「トサカの兄ちゃん」こと竜二を主人公に、上方落語界とそこを取り巻くいろいろな人たちのドラマが展開していきます。
落語なんてものには興味も知識もなく仕方なくやっている竜二ですが、師匠や先輩、たくさんの人と出会ううちに、本物の噺家を目指すようになるという物語です。
短編の連作集で、各ストーリーには落語のタイトルが付けられています。そしてその噺にちなんだような事件が起きては、主人公が推理をするというミステリー仕立てになっています。 そこが「謎解噺(なぞときばなし)」たる所以でもあります。
はちゃめちゃな人々が巻き起こすとんでもない事件、でも落語のように笑えて、泣けて、時にはしんみりするという味付けが効いています。
実は笑いの天才かもしれない?竜二の落語家としての成長も楽しみのひとつです。
ひとつだけ残念だったのが、上方落語にあまりなじみがないので、タイトルに使われている噺をあまり知らなかったことです。江戸の噺ならたいていは知ってるんですけどねえ。
でも関東と関西の落語を取り巻く状況の違いなども書かれていて、そういう点でもとても面白く読めました。
ドラマ「タイガーアンドドラゴン」の原型は明らかにここにあるようですが、実際はどうなんでしょうかねえ。
しかし、田中啓文さんは本当に落語が好きだったのですね。前に「銀河帝国の弘法も筆の誤り」を「SF落語」と評してみたのですが、これを読んで田中氏の落語への造詣の深さを知り、「ああ、やっぱりね」と納得ができました。
ところでこの本には、続編も出ています。ミステリー色はちょっと薄くなってしまったのですが、竜二の活躍は多いに楽しめます。
集英社 (2006/08)
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