2006/03/04

地球の緑の丘:ロバート・A・ハインライン

thepast未来史〈2〉地球の緑の丘

「未来史」と題されたハインライン中期の短編集。

人類が月世界に暮らすことが普通の事になった時代が舞台になっている。分類するならやはりSFなのかも知れないが、ここには何時の時代も変わらない人間の営みを描いた小説が集められている。
即ち、ユーモアあり、英雄的行動あり、冒険ありの、まさしく人類が作り出す「歴史」の断片が描かれているのである。

収録作品

 宇宙操縦士
 鎮魂曲
 果てしない監視
 坐っていてくれ、諸君
 月の黒い穴
 帰郷
 犬の散歩も引き受けます
 サーチライト
 宇宙での試練
 地球の緑の丘
 帝国の論理

たった一人の反乱の顛末を描いた「果てしない監視」で涙。

<ハヤカワ文庫>
しかしこれも絶版。なんだかなあ。

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2005/12/28

ガンスリンガー:スティーヴン・キング

4102193391ダーク・タワー1 ガンスリンガー
たったひとりで荒野を旅するガンマンの物語。
その風景はマカロニ・ウエスタン映画に登場する、さびれた西部の町を思い出させるが、でもどこかが違っている。例えば、調子はずれのピアノが奏でる古い古い曲は「ヘイ・ジュード」なのである。
何ゆえか、故郷の国の唯ひとりの生き残りとなったガンスリンガー(拳銃使い)ローランドは、変転する世界の謎の手がかりを求めて、黒衣の男を追い続けている。
その目的のためには非情となる決意をした彼だが、黒衣の男の策略によりある残酷な決断を迫られるのだった。

一度は終末を迎えてしまった世界の、そのもっと未来の時代なのだろう。
カラカラに乾いた砂漠の風景が、すべてが荒れ果ててしまった世界を見事に体感させてくれるようだ。主人公ローランドに感情移入するのは、この巻では難しいことなのだが、どの人物も謎に包まれたままの登場で、長い長い物語のプロローグとして、申し分のない作品と言えるだろう。

このシリーズは角川版で第4巻まで出版されていたものを、今回新潮文庫から新訳で全巻刊行となった。
ファンは第5巻を心待ちにしていた訳で、肩透かしを喰らったとも言えるが、今回キング自らの筆が加わって、壮大な物語がより完成度の高いものとなってファンの前に現れたのは、大変嬉しいことである。
翻訳者も変わっていて、両方を読み比べてみるのも面白いかもしれない。キング自らの2つの「まえがき」を読み比べるだけで、プラス本一冊分くらいは楽しめるのである。


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2005/11/09

リタ・ヘイワース

このブログを始めてまもない頃に書いた「刑務所のリタ・ヘイワース」というエントリにいまだに沢山のアクセスをいただいております。
皆様、ありがとうございます。

ところで、この小説で重要な役割を果たす「リタ・ヘイワース」の顔を実はよく知らなかったので探してきました。

まず、「アイドルの休日」風の写真。卓球してます。--Rita Hayworth - Ping Pong Photos

で、こちらは彼女の写真ばかりたくさん集めたギャラリー。水着写真もあります。--Photo Gallery #2

キングの小説に出てくるのは、どのポスターなんでしょうか。

本文にはこうあります。

リタの服装は――あれを服装といえるなら――海水着一枚で、片手を頭のうしろに当て、両目を半分つむり、あのふっくらした、すねた感じの唇を半びらきにしてる。そのポスターは<リタ・ヘイワース>と呼ばれていたが<ほてった女>でもよかったかも知れない。
(刑務所のリタ・ヘイワース/新潮文庫)

興味と根気のある方は探してみて下さいませ。


cover



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2005/10/11

蝉しぐれ

416719225X蝉しぐれ
原作があまりにも素晴らしいと、忠実に映像化しようと努力しても決してその原作にはかなわない、のかもしれない。

今月封切られた映画を観てきた。波乱万丈のストーリーも、感動の大団円があるわけでもないので、映画としてまとめるのは難しい作品だとは思う。
それでも、父子の愛情や少年たちの友情、お家騒動にかなわぬ恋。どれも美しく情感豊かに描かれている。また、季節の移ろいの美しさに見とれてしまう。満開の桜、一面の雪景色、黄金色の稲穂、そして蝉しぐれ。丁寧に丁寧に時間と愛情を込めて作られた映画だということがよくわかる。

それでもこの映画は小説の感動を超えられなかったと思う。原作への愛情が伝わって来るだけに惜しい気がして仕方がない。

もちろん前のNHKドラマよりはだいぶましだったとは思うが。(内野聖陽はともかく、おふくの女優は完全にミスキャストだった。芝居できないんだもの。)
ストーリー上、細部が省かれるのは仕方がないのかもしれないが、文四郎が「養子」だということが説明されないのは何故なのか。血の繋がらぬ厳しい父を、心から尊敬するに至る過程がかなり重要なのだと思うのだが。

また「矢田さんの妻女」はもっと危険なほど美しくなくてはいけないし、夫が腹を切らされて後の転落ぶりも描いてもいいんじゃないかと思うのだが、それもなんだか適当に流されてしまった感じがする。

圧巻はおふくと赤ん坊を逃がすための、殺陣の場面。屋敷中の刀を集め、抜き身を畳に刺して待ち構える主人公達。1人切っては次の刀、1人切っては次の刀、と変えて行く。「人を切ったら、刀は切れなくなる」というこのリアリティが怖い。このシーンの緊迫感が凄まじい。侍ふかわりょうもなかなかの演技だったと思う。(今田耕治は違うでしょ。頭が切れる感じが皆無。)

静かなラストシーンも結構好き。

でも終わってからの余韻も小説にかなわないんだなあ。本当に惜しいなあ。


ところで、藤沢作品で一番好きなのは実はこれ。(短編の連作。お勧めです。是非最後まで読んで下さい。)
4101247013
用心棒日月抄


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2005/10/06

タイム・マシン大騒動:キース・ローマー

timemachine

【あらすじ】祖父の遺産として、世界中のあらゆる事象に関するデータを記録し続けている巨大コンピューターを相続したチェスター。そんなものよりも現金が必要な彼は、コンピューターに本物そっくりの歴史的映像を再現させて、観光客相手にひと儲けをたくらむが、友人とともに「本物の歴史映像」の中に放りだされてしまう。コンピューターは実は「タイムマシン」だったのだ。果たして、彼は大事な友人を救い出し、現在へ戻ることができるのだろうか。

私にとっての「幻の本」を手にいれました。(楽天フリマにて)
前生再生機』への愛情からキース・ローマーの記憶を辿りはじめた私ですが、手に入る本を出来る限り集めるというマニアの域に入りつつあるのかもしれません。

多作な人ですから、いくつか「あれ?」って感じのもありましたけど(今までのエントリの分は全部面白いです!)、この『タイムマシン大騒動』は面白かったですね。まずいつも通り「うすっぺら」な主人公。口は達者なので、自分の無能を突かれると絶妙な言い訳と反撃に出ます。この小憎たらしい言い訳が私は結構好きなのです。
そして今作品では、そんなダメ男ぶりを見込まれた主人公は未来世界で特訓を受けて、知恵と力と勇気を持ったヒーローへと成長して行くのです。「自分の意志で困難を乗り越える」ということをかなり強引なストーリー展開の中で、一貫して語っているのがローマーの小説の魅力なのだと思います。

余談ですが、ハヤカワ・ポケット・ミステリのこの本の定価が270円であることにびっくり。
この前買ったポケミスは2000円近かったような。物価上昇だけでは割り切れないくらいの上がり方だと思うのですが、どうなのでしょう。これも本が売れなくなった、ってことの証拠のひとつなのでしょうか。


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2005/09/20

家なき娘:エクトール マロ

家なき娘

【あらすじ】
両親を亡くした少女ペリーヌは、父方の祖父のいるフランスの町マロクールを目指し、たった一人旅することになる。餓死寸前の危機を乗り越えて、目的地に辿りついたペリーヌだが、肝心の祖父は両親の結婚に反対していたため、自分から孫と名乗ることができないのだった。いつか共に暮らせる希望を抱いて、ペリーヌは祖父の経営する工場で働きながら自立の道を探るのだった。


子供の頃に読んだ本がずっと記憶に残っていた。ストーリーそのものはあまり記憶になく、可哀想な女の子が、お金がなくて水辺の小屋で1人で暮らす情景だけが鮮やかに残っていた。葦の茎から靴を作ってしまうところが大好きだった。「靴作ってみたい!!」と本当に思ったのだから。

後になって、アニメ「ペリーヌ物語」を見た時、最初は全くわからなかったのだが、自分で靴を作る場面を見て、「ああ、あれはこのお話だったんだ」と気づいたのだ。
以来、もう一度読みたいと思っていたが、子供向けの抄訳本やアニメ関連の本ばかりで諦めかけていたのだが、最近ようやく完訳版を購入することが出来た。

時代は19世紀。インドがイギリス領だった時代だ。作中でペリーヌは「母はイギリス人」と言っているが、実はインド生まれのインド人である。だからイギリス人とインド人のハーフであるペリーヌは髪がブロンドで、肌が浅黒いのだ。祖父が激しく「結婚は無効だ」とまで怒る理由は相手がインド人であるからに他ならない。
フランスの労働者の貧困ぶりも克明に描かれていて、終盤、ペリーヌが祖父と共に従業員の福祉に尽力する様子など、今読んでも大変興味深いものがある。

不幸な子が最後に幸せになるお話は数あるのだが、この物語の一番の魅力は主人公が自らの知恵と努力、そして意志の強さで自分の人生を切り開いていくことだろう。そしてその幸せを自分だけのものとして満足するのではなく、周りの人々すべてを幸せにすべく、活動する力強さにあるのだと思う。
「アン・ファミーユ」=家族として、というタイトルはペリーヌの祖父が最後に言う言葉だけれど、実は作者自身が家族や人間に対する愛情を込めているような気がするのである。いつか、家族のように皆が暮らせますように、と。

<偕成社>

ペリーヌ物語

個人的には、これこそ「アニメ世界名作劇場」の最高傑作だと思っております。
ハイジでもパトラッシュでも泣きませんでしたが、ペリーヌで号泣しました。


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2005/07/16

ハリポタ6巻、届きました。

Amazonに予約を入れていたので発売日の今日、届きました。
050716_14480001

アダルト・エディションです。
(Harry Potter and the Half-Blood Prince
(Harry Potter 6) (UK) [Adult edition]
)
カバーをはずすと背表紙に題字だけが入った黒い表紙になっています。

大サービス(?)で1ページをお見せしますね~。
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第一章のタイトルは

"The Other Minister"

です。

面白そうです。じっくり読みます。(だって速くは読めない...。)

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2005/06/16

初秋 : ロバート・B・パーカー

初秋
誰かが自分のことを気にかけてくれる。
誰かが自分のそばにいてくれる。

誰かが自分のためにきちんと世話をしてくれる。
誰かが自分のために何をどうすべきか教えてくれる。

働いて何かを創り出す。
ひたすら体を鍛える。

そして「自分の人生を得る」ことができた少年は大人になっていく。

この作品でもっとも感動的なのは、傷ついた少年に主人公スペンサーが「自分の教えられること」(体を鍛えること、家を建てること)を教えることによって、彼に自分の人生を切り開くための力を与える、という部分だろう。

この寓話のような探偵小説から、若い人は、「自分の人生」を得るためにはシンプルな努力こそ必要なのだ、と学ぶだろうし、そしてもう若くない人は、子供に教えなくてはいけない一番大切なこととは何か、を学ぶのである。

そう、それは「人生とは自分自身のものなのだ」ということなのだ。
これは簡単そうで気づくのが難しい真実だ。

親になった人たちが子育てでやってしまいがちな失敗のほとんどは「子供の人生は親の物ではない」という当たり前の事実に気づかないところからはじまるのだと思う。
「こどものため」と思えば思うほど、自分の夢を果てしなく投影してしまい、親も子もなんだかきゅうくつになってしまうのだ。(もちろん自分の子育てへの強い反省を持ってそう思うのである。)


しかしまあ、「『これが自分の人生だ』と自信を持って生きてゆくのは、ずいぶんと難しいことだよなあ」と、この年になって感じている。ハードボイルドな生き方への道はすごく遠いのである。

※スペンサーシリーズの中でというよりも、自分の読書歴の中でもベスト10には入れたいと思っているほど大好きなこの作品、読書好きな皆さんの間で傑作の誉れ高いのは、大変嬉しいことである。

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2005/04/30

時の彼方の再会:ダイアナ・ガバルドン


時の彼方の再会Ⅰ

『時の旅人クレア』の感想は以前に書いたのですが、実はそのあと続編「ジェイミーの墓標」が出ていまして、すぐに読んでしまったのですが、感想は書いていなかったのです。そしたらもう続編が3分冊で。

2作目では、過去の時代の夫に心を残しながらも現代に戻ってきてしまった主人公クレアの現代の生活が中心でした。どちらかというと回想シーンが多く、また夫ジェイミーはその後どうなったのか、という謎解きが中心でした。正直、多少中だるみな感はあったのですが。
今作では、やっと夫ジェイミーの居場所が判明し、クレアはもう一度過去の世界へと旅立って行きます。もうそれからは行動派クレアの面目躍如という感じで。
いつものサービス満点&ユーモアもたっぷりな官能シーンを織り交ぜつつ、なぜか物語はカリブの海賊風になっていきます。

「漂流してここにつくかいっ!」というご都合主義もほほえましくて、こういうのも好きなのであります。

そして二人は幸せに暮らしました、ということで完結かと思っていたらなんとまだまだ続くのだそうです。既に第6巻まで出ているのだとか。ロマンス版大河小説、ということですかね。

4巻の翻訳を待ちましょうか。(いや、原書読むべきかな。)

時の彼方の再会Ⅱ
時の彼方の再会Ⅲ

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2005/04/19

犬は勘定にいれません:コニー・ウィリス

あるいは、消えたヴィクトリア朝花瓶の謎
 
もうのっけから???の連続。瓦礫のなかで「女王陛下の消防隊」になりすまそうとしている主人公たち。

なんで?

『鳥株』? なんじゃそりゃ?

君たちは誰で、そこはどこで、なにをしてるのか?

そしてそこはいつの時代なの?

てな感じのクエスチョンマークの嵐が巻き起こるプロローグが秀逸。表紙の絵からはあまり想像できないような、本格SF空間(しかもユーモアたっぷり)に連れて行ってくれます。

自分の意思があるんだかないんだか、逆らう気力も体力も奪われて、時のかなたへ行ったり来たり、重度の「タイムラグ」と睡眠不足と恋心でよれよれの主人公、ネッドが魅力的なんだなあ。

彼がひと目ぼれしてしまう瞬間の描写がすごく良い。

不吉な沈黙につづいてドアが開き、そしてそこに、これまでの人生で見た中でもっとも美しい生きものが顕現した。

おお、ネッド頑張れ~!! と、つい応援したくなってしまうじゃありませんか。

もともと興味があるということもあるのですが、ヴィクトリア時代の人々も風俗も面白いです。(「お花の形のペン拭き」欲しい!)
ひらひらふりふりのドレスが大好きなお嬢様のくどくどした日記では、モンゴメリーの小説を思いだしたりして、個人的にツボでした。(「エミリーはのぼる」とかね。)

結局、ネッドが大活躍したのかしないのかわからないうちに事件は一応解決を見るのですが、最後の方の彼は、やっぱり少し成長して男らしくなったように思えるのです。

ああ、面白かった。

「オックスフォード大学史学部シリーズ」の第2弾、だそうです。

じゃあ第一弾も買うしかない、かな?(ドゥームズデイ・ブック


<早川書房>


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